江島神社で祀られる神様
江島社は江戸時代末まで「金亀山 与願寺(きんきざん よがんじ)」という寺院であった事実はあまり知られていない。
当該、与願寺では「弁才天」を奉祀したが、明治維新以後、神仏分離や廃仏毀釈の潮流を受け、弁才天像と信仰を護持すべく、主祭神を神道形式の「宗像三女神」へと改め、弁才天を摂社で奉祀した。(祭神が改められた理由は後述💘)
江島社は江戸時代を通じて「江島弁天」や「江島明神」などと尊ばれ、江戸八百八町の民衆はじめ、全国より多大な信奉が寄せられた。
明治維新後(現在)に祀られた神様
辺津宮の御祭神「田寸津比賣命/多岐都比売命(たぎつひめのみこと)」
宗像三女神の一柱。
日本書紀では「湍津姫命」と表記され、古事記では「多岐都比売命」と記される。
「湍」は急流、早瀬(はやせ)などを意味し、「岐」は海岸・河口のほか、泉などの水が湧出する場所の意がある。
然るに、この神の神名は、まさに弁才天の源流たるインド発祥のサラスバティーに近しいものがある。(由緒は後述)
中津宮の御祭神「市寸島比賣命(いちきしまひめのみこと)」
宗像三女神の一柱であり、日本書紀には「市杵島姫(いちきしまひめ)」や「市杵嶋姫命」「狭依毘売命(さよりひめのみこと)」と記す。現今、弁財天といえばこの神のことを指す。
市寸島比賣命は古くより宗像三女神の一柱として宗像大社(福岡県宗像市)や厳島神社(広島県宮島)にて奉斎され、海神・水神として崇められ、湖や池、川辺などの水辺に祀られた。美人の神とも云われ、今日、宗像三女神を代表する神としても名高ぃ。
いっぽうの弁才天も、ヒンドゥー教の河の神・サラスバティーにルーツを持つことから、日本への伝来後、両神(弁才天と市杵島姫)はそれほど時を経ずして習合・同体化し、近世まで全国各地の宗像社や厳島社にて弁才天としても奉祀された。
⬆️毎日同じマスクを装着して早1ヶ月。ある日裏側を見たら苔が生えとった毎日何を食うてんねん&早よ洗わんかぃ状態ほど噂の‥‥「サラスバティー」 …苔生えるて相当やぞ。‥‥コケぇ!
厳島社は古くは「伊都伎島神社(いつきしま/伊都岐島神社)」と記されたことから、名前の類似性を以って、市杵島姫と早くから習合した。
とりわけ、七福神における市寸島比賣命(弁財天)は、芸術、学問、財福の神として知られる。
奥津宮の御祭神「多紀理比賣命(たぎりひめのみこと)」
宗像三女神の一柱。古事記では「多紀理毘売命」、日本書紀では田心姫(たごりひめ)や田霧姫(たきりひめ)と表記される。
なお、古事記では「奥津島比売命(おきつしまひめのみこと)」の別名も記す。
この神が面白いのは三女神の中でも唯一、「霧」の文字が入ることにある。
少々、想像力をたくましくすれば、「田心」や「田霧」の名を以って農作(農業)との関連性が見えてきそぅではあるが‥‥はてさて。
江島神社の御祭神の詳細については公式サイトにも記されるので要チェック💘
弁財天とは?
⬆️江島社の奉安殿に安置される「妙音弁才天」※奉安殿内部は写真撮影禁止
弁財天は我が国では七福神の一柱とされ、唯一無二の女神とされ〜る。
元来、古代インドのヒンドゥー教の女神・晒すわよ‥ではなく、「サラスバティー」!!と称し、我が国では琵琶にも例えられる古代インドの弦楽器・「ヴィーナー」を持物とする。
星霜経て仏教に取り入れられるとインドから中国へ伝わり、「弁才天」「弁才天女」「弁財天神」などと漢訳され、我が国に伝来した。
弁才天伝来と共に伝えられたとされる「今光明最勝王経(こんこうみょう さいしょうおうきょう)」の「大弁才天女品」には、調伏(ちょうぶく)、音楽、弁舌、財富をはじめ、多種多様な利益があるとされ、その居処は「山厳探険、坎(穴)、窟(いわや)、河辺、大樹叢林(そうりん)」などと記される。
像容
弁才天の像容は八臂(はっぴ/8本腕)で各腕には持物として弓、刀、矢、鉾、斧、長刀、鉄輪、羂索(けんさく/手錠付き縄)を持つ。
大日経などの仏典には「妙音天」「美音天」として世に現出したと記すも、胎蔵界曼荼羅(たいぞうかい まんだら)の中では琵琶を持ち、指は弦を爪弾く(つまびく)ような二臂(2本腕)の姿態で描かれ〜る。
また、鎌倉時代編纂の偽経(ぎきょう/日本独自の思想を取り入れて偽作された経典)である「弁天五部経」によると、弁財天が白蛇や老顔をした宇賀神(うがじん)と習合し、招福蓄財の利生(利益)があると説く。
あまり知られていないが、今日に広く知られる穀物神・宇迦之御魂神の「ウカ」は、元来、蛇神を指すとする説があり、すなわち、蛇の姿態を有する老顔の宇賀神は穀物神(稲荷神)にも例えられた。
上下の画像引用先:https://ja.wikipedia.org
長らくの時を経て、その宇賀神は河川の神・弁才天と習合することで五穀豊穣をもたらす神へと変貌を遂げ、我が国の思想が生み出した固有とも言うべき、弁才天の頭部にトグロを巻いた身体を具有した 奇異な像容の弁才天が生み出された。
⬆️著名な銭洗弁才天境内の石碑(鎌倉)
利生の変化から「弁才天」から→「弁財天」へと表記も変化する
弁財天は宇賀神と習合したことで我が国の新たな神として素敵に君臨し、大衆は多種多様な利生(利益)を内包していると盲信した。….素敵?
やがて、福徳財富の利益があると信奉されはじめると、今日に知られる「才」に代わって「財」が付され、「弁財天」などと表記されるようになる。
「弁才」とは、「才智あふれる能弁・口才の巧者」を意味し、「弁財」とは「金品を返す」いわゆる蓄財絡みの利得がある事柄を示す言葉ともいえる。
たとえ一字だけの些細な表記の違いとはいえ、世相やそれを背景とした人々の願望に大きな変化が生じたと捉えるべきであろぅ。
琵琶(弦楽器ヴィーナー)を持つことから芸能の神とされる
冒頭に記したように弁才天は元来、「サラスバティー」と称する弦楽器を携えた女神だったことから、仏教と習合した後もその姿態は変わることなく、弦楽器を持物とした。
我が国への伝来後は宇賀神と習合して蛇の身体を具有した類例は数多く現存するものの、現今、衆目の視るところでの弁財天のイメージとしては、弦楽器を持つ像容がオーソドックスなのであろぅ。
日本五弁天
以下に列記する弁財天を奉祀する五社は「日本五弁天」として名高ぅぃ。
- 安芸の厳島(広島県 宮島)
- 近江の竹生島(都久夫須麻神社/つくぶすまじんじゃ/滋賀県 大津市)
- 大和の天の川(天河神社/奈良県 天川村)
- 陸前の金華山(黄金山神社/宮城県石巻市)
- 相模の江の島(江島神社/神奈川県 藤沢市)
【注釈🐣ピヨ01】
日本五弁天の中でも当社(江島社)はじめ、厳島社、都久夫須麻社を合わせた「日本三大弁天」なる呼び方もある。
弁才天は「道の神」でもある
宗像三女神は「道主貴(みちぬしのむち)」と称する別名があり、現在では「道の神」として、海陸を問わず、交通安全の神としても知られるほか、あまつさえ芸事などの”道の上達”にご利益があると信奉される。
これは宗像三女神の一柱である弁才天にも通じる。
江島神社のご利益
現在、当社で頒布する一般的な紙製の大麻(ご神札)は大きく2種類あり、それぞれのご利益を巫女さん❤️に尋ねたところ、以下に列記するような利益があるとのことだったので、参考までに明記しておこぅと思ふ。
「江島神社 神璽」と記されたお札
このお札は江島神社(辺津宮、中津宮、奥津宮)で頒布されているお札となる。
一般的に江島神社の大麻(神符)といえば、このお札を指す。
- ご利益:海上交通安全、家内安全、豊漁
「江島辯才天 神璽」と記されたお札
このお札も江島神社(辺津宮、中津宮、奥津宮)で製頒されているお札ではあるが、「辯財天」と記されていることから、弁財天に由来したご利益になるとのこと。
- ご利益:芸事の上達、金賽富貴、財宝招福
お札に猛々しい龍神が描かれているので、大衆心理としては外観だけでこのお札を選んでしまぃそぅにはなるが、神霊の依代と認識するならば、祭祀と割り切って厳格に向き合いたいとぅぁい ところではある。
江島神社の霊験譚
勝利を呼び込む女神(武運長久、勝運の神)
徳川家康公は会津征伐(上杉征伐)のみぎり、江の島へ来島し、江島弁財天に戦勝祈願する。
程なくして関ヶ原合戦が起こり、家康公を勝たせた江島弁財天は勝利を呼び込む女神として、代々の将軍家ならびに徳川譜代家臣より多大な尊崇が寄せられた。
信仰すれば残念な思いはさせない
江戸中期の肥前長崎出身の医師・吉永升庵(よしなが しょうあん)は、「江島弁天は利生の百億の分身の一つである」と喧伝し、自らは信者の第一人者として篤く信奉した。
出世大成
杉山検校(すぎやま けんぎょう)といえば今日にまで伝承される管鍼(くだばり)治療の考案者として世に広く知られるが、そのキッカケとなったのが江島弁財天だった事実はあまり知られていない。
検校が江島弁天の結願日に参詣したみぎり、江島下ノ宮(現在の辺津宮)まで来たところで境内の石コロ‥ころころドコいった‥‥に躓き(つまづき)、その時に松葉鍼を思いついたらしい。
この後、管鍼治療を確立し、江戸にて大成する。
医療の発展
江戸中期の井伊・稲葉・越後稲葉らの大名家は、江島弁天信仰の第一人者でもある上記、杉山検校や吉永升庵らを、かかりつけの御用医師(侍医)とていたが、彼らの医療技術によって尊い命を取り留め、検校らも江島弁財天の功能福徳(功徳)を大名らに喧伝したことで、結果的に「弁天三檀家」と称されるまでの敬虔な信者となった。
斯くして彼ら(検校ら)は今日では日常的に見られる先進的医療の先駆者となったのである。
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